耳下腺腫瘍のエコー診断

耳下腺癌に遭遇することは頻度的に稀で、ほとんどが多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍です。この記事では、多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別のポイントと耳下腺癌の診断のポイントについて簡単にまとめてみました。

この記事は、書籍、ネット情報、個人的主観を交えて作成しています。また、記事は追加、変更することがありますので、ご注意ください。

多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別

良性腫瘍の種類と頻度

WHO分類では、良性が10種類に分類されているが、8割前後が多形腺腫とワルチン腫瘍で占めている。

多形腺腫
ワルチン腫瘍
基底細胞腺腫
筋上皮腫瘍
オンコサイトーマ
細管状腺腫
脂腺腺腫
リンパ腺腫
導管乳頭腫
嚢胞腺腫

多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別

エコー所見としては、いずれも円形もしく楕円形の境界明瞭平滑な腫瘤で、嚢胞変性も稀ではありません。また、後方エコーも増強し、性状も類似していることから鑑別が難しい。

特徴として、多形腺腫はサイズの増大(3cm以上)に伴い、多角形、分葉状になることがある。

また、ワルチン腫瘍は、内部に隔壁構造を有することがある。

多形腺腫は一般に増大傾向があることや悪性転化の可能性(1.5〜4.5%,高齢者に多い)があり、ワルチン腫瘍との鑑別は重要となります。急激な増大や辺縁の不明瞭化は悪性転化の所見となりうるため、注意深い経過観察が必要です。

エコー所見以外の特徴

ワルチン腫瘍以外の腫瘍でもTcシンチグラフィーで集積することがある。多形腺腫は3~5%程度の症例で集積がみられ粘液産生腺癌でも集積する。未分化癌と形質細胞腫、粘表皮癌でも集積の報告がある。

FDG-PETでは Warthin 腫瘍の大多数と多形腺腫の半数以上で集積するため、悪性腫瘍との鑑別は困難となります。

エコー画像

1.多形腺腫

形状は分葉状で、内部に嚢胞変性、後方エコー増強と典型例です。

2.ワルチン腫瘍

辺縁整の類円形腫瘍で、後方エコーは増強している。嚢胞変性を認めるが、多形腺腫よりも嚢胞部が目立ちます。

3.多形腺腫

多形腺腫であるが、分葉状でない場合、ワルチン腫瘍との鑑別は困難になります。

耳下腺癌の特徴

悪性腫瘍の種類と頻度

腺房細胞癌 
粘表皮癌 
腺様嚢胞癌 
多型低悪性度腺癌 
上皮筋上皮癌 
明細胞癌 NOS 
基底細胞腺癌 
脂腺癌 
脂腺リンパ腺癌 
嚢胞腺癌 
粘液腺癌 
オンコサイト癌 
唾液腺導管癌 
腺癌 NOS 
筋上皮癌 
多形腺腫由来癌 
癌肉腫 
転移性多形腺腫 
扁平上皮癌 
小細胞癌 
大細胞癌 
リンパ上皮癌 
唾液腺芽腫

WHO分類では、23種類に分類されているが、耳下腺癌自体非常に稀な疾患です。私も遭遇したことはありません。高悪性度から低悪性度まで幅広く、某大学病院の治療実績では、頻度順に粘表皮癌、腺房細胞癌、多形腺腫由来癌、腺様嚢胞癌となっていました。

耳下腺内にリンパ節以外の腫瘍があった場合、最も重要なのは、良悪性の鑑別です。

他検査時に偶然発見される場合ありますが、耳下腺部の腫脹や腫瘤として、検査する場合もあります。

腫瘤として触知できる場合は、圧痛がないか、可動性がないか、また、顔面神経麻痺の有無も確認しましょう。

耳下腺癌の悪性三兆候

  • 痛み:50%位(自発痛もしくは圧痛)、良性では5%
  • 癒着:周囲へ浸潤しやすいため、可動性に乏しい
  • 顔面神経麻痺:20%位

エコー所見

  • 不整形
  • 辺縁不整
  • 実質エコー不均質
  • 高エコースポットを有すことがある
  • 血流豊富
  • 後方エコー減弱

とはいえ、エコー所見のみで良悪性の鑑別は困難の事も多い。

エコー画像

1.腺様嚢胞癌

境界一部不明瞭な不整形の充実性腫瘤である。後方エコーはやや増強している。

2.腺癌

類円形の充実性腫瘤。良性腫瘍との鑑別が困難であるが、よく見ると一部辺縁不整(矢印)。後方エコーの増強はなく、悪性を疑う所見である。

わずかな変化が悪性所見となるため、慎重な観察が必要です。

//画像引用:https://www.us-kensahou-seminar.net/muse12/ch1/sub1/index.html

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